【5本目 三方斬】

《意義》


  正面及び右、左の三方に座した敵に対し、まず正面の敵の霞に払いつけ、 次に、90°右に向きを変えて右の敵の頭を斬り、 更に180°左に向きを変え、左の敵の頭を切る。

《動作》


  初めの姿勢は帯刀して正座し、右足のみ左足の親指の少し前に足裏を床に着けて膝を立てる。 左手は左足の腿上で鯉口がすぐに握れる位置に伏せておき、 右手は前腕の中程を右足膝の上にゆっくりと置く。 つまり、寛いだ姿ながらすぐにでも抜刀できる備えである。

  頃合いをみて左手にて鯉口を握り同時に右手は柄にかけ、 左膝を立てながら抜刀し始め、右足を正面に蹴り出すと共に、 鯉口を外側に直角に返して一気に横薙ぎに前の敵に払いつける。

更に、直ちに、その余勢をかって、左膝を軸に右足を90°右に踏み開くや否や 刀を左旋回させて右敵の頭を斬る(※紫電の要領にて)。

再び、それにて休止することなく忽ち左膝を軸にして左廻りに 180°体を向きかえるや否や左の敵の頭を斬り下ろす(この時は両手斬り) (※井桁崩しの要領にて)

  次に、右足の踵を左足の踵の右に接する位置まで体を右に回転して両膝を床に着く。 この動作の時も左膝を軸として体の転換をするのであるが、 右足の踵を左足の踵に引き寄せて位置を決定する点が重要なポイントとなる。 両足の膝の開きは約90°弱が適当である。 立てている両踵の上に等分に尻をのせ、両手は交叉して刀を水平に保持し、 峰が手前刃が外向きになっている。眼は左下に注いで残心を示す。
  次に、徐に鞘を抜き出して鯉口をはばき元に寄せ、 鯉口を保持する左手の親指、人差指、中指の3本の指にて一旦刀身を支え、 右手を離して柄を下から持ち支え、刀身の血を拭うが如く刀身を右にずらせていき、 切先が鯉口に至るや、右手を90°左前に旋回して切先を入れ、 次に鯉口と刀身を立てて納刀していく。 納刀が終わると右手は右膝に伏せ、眼は正面に返す。 次に、左足を半歩正面に出して膝を立て、つづいて右足を左足に副えて立ち上がる。
  ※ 紫電:2つの動作を1挙動にて間断なく行う。
  ※ 井桁崩し:古武道家”甲野 善紀”さんが唱えている用語で、2つの動作を1挙動に縮めて行う事。
《三方斬》の場合、次の動作を1挙動にて行う。
(1)体の向きを180°後に変える
(2)振り下ろした刀を上段に構える
つまり、振り下ろした刀を上段に移しながら、同時に体の向きを180°後に変える動作で
向きが変わった際には、刀は上段に構えており、すぐ様相手に斬り下す事が出来る。



【動画編】


    三方斬(MP4形式の動画です。



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